「コペルニクスの呼吸」70年代、パリ、サーカス
タイトルの三要素に惹かれて買いました。
「同級生」の映画で中村先生を知った新参者です。(ダ・ヴィンチで紹介されていた「ウツボラ」は気になっていたけれど作家さんまで確認してなかった…後悔。)
あらすじ
舞台は70年代のパリ。団員を売春させて生計を立てているサーカス一座。そのサーカス団にピエロとして所属していたトリノスはある出来事をきっかけにサーカスから逃げ出し、客の一人である日本の外交官オオナギのもとで暮らしはじめる。
<以下ネタバレ注意>
全二巻で完結です。空中ブランコの相方であった弟の墜落死のトラウマやそれを生々しく甦らせたプリマの墜落。主人公を買ったオオナギとその妻の歪んだ関係もろもろ…。一巻目はひたすら陰鬱で、主人公の人生においての下り坂です。
けれど二巻目は「飛べなくなった」トリノスが再び信念をもってサーカスに戻るまでが描かれています。
物語の後半、サーカスの団長であるオーギュストとトリノスの会話シーン。オーギュストの一言で今まで欝々としていた世界がやっと前に進みだす。
トリノスの自分と弟の関係性の理屈付けをオーギュストが一蹴し、真理を言い放ったその瞬間はもう鳥肌ものでした。
その帰り道でのトリノスと弟の亡霊との別れのシーンといい…素晴らしい作品でした。
かなりハードエログロ描写や、絵柄の独特さで好みは分かれると思いますが、良作の映画を一本見終わったような満足感に浸れる作品です。
(追記)作品中にたびたびでる詩が本当に素敵です。