好きなもの 備忘録

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ゴールデンカムイ あんこう鍋 感想

※ネタバレしかしていないので注意 

 

尾形百之助と花沢勇作が愛しくてしょうがない今日この頃

 

103話「あんこう鍋」 神回でした。尾形と 母 父 弟 三人との関係性のお耽美が過ぎるのでもう本当にしんどい

とりあえず母と父についての考察もどき?をば

 

 

尾形と母

愛した人(花沢中将)に捨てられ気狂いになった母を殺鼠剤で殺す。

「少しでも母に対する愛情が残っていれば父上は葬式に来てくれるだろう」

「母は最後に愛した人に会えるだろう」

と尾形は「母を殺した理由」としてこう語っている。

ただこれは尾形自身がそう語っているに過ぎないともいえる。

日ごろから「信頼できない語り手」が登場する類のものを読んできているせいか、こじれた関係性においての「動機の告白」にはこれは本心ではないのではないだろうかといった視点で見てしまう。

簡単に言うと「自分自身に言い訳をしている状態」なのではないか、と・

 

そもそもの話「死んだら会えない」

母親の葬式に来た父に会えるのは尾形自身ではないか

本当に母と父を会わせてあげたかったのならなぜ「自分が死ぬ」という選択肢がなかったのか

 

結局尾形はあの時、母に対して何の感情も持ってはいなかったのではないか

はじめは持っていたのかもしれない。そう思うのはVS谷垣の際に自分を「婆ちゃんっこ」と称しわざわざ一時離れて谷垣だけを殺そうとする。生まれながらの「情がない」人間の行動とはとても思えない。

 

ではなぜあんな方法で母を殺せたか

 

それは毎日毎日父を思ってあんこう鍋を作り続けた母

自分が鳥を獲ってきても見向きもしなかった母

ひたすら「父」だけを見つめ続けた母に尾形は「同化」していってしまったのではないのかと私は考えてしまう。

 

花沢中将が戻ってくると信じて母はあんこう鍋をつくった

父が戻ってくると信じて尾形は母を殺した

 

尾形が「信用できない語り手」だとすると「母のため」ではなく「自分自身の為に」殺したのではないのだろうか

ひとえに「父」に戻ってきてほしいがために

 

 

でも

 

「あなたは来なかった」

 

 

尾形と父

父を拘束し腹を裂いた尾形。「もうすぐ死ぬ」父と尾形の双方の認識はどこかすれ違っている気がする。

 

花沢中将:百之助は母を疎ましいと思ったから殺した

     二人を捨てたのを恨んだから百之助は自分を殺す

疎ましい…恨めしい…マイナスな言葉を使っている

それに反して

尾形  :花沢中将を「あなた」「父上」と呼ぶ

     「愛」のたとえに「神」を用いる

     自分とは違い父に愛された異母弟を「勇作さん」呼び「高潔」と称す

疎ましい…恨めしい…と思う相手に対する言動ではないきがしてならない

 

このあと尾形は勇作を殺した理由を語る。また「動機の告白」だ。

 

私は先ほど尾形の母に対する真意は言動と不一致すると結論付けた。

尾形は「信用できない語り手」ではないのかとした。

 

しかし、勇作に対するこの告白も同じ手順で解釈しようとは思っていない。

なぜなら両者には決定的な違いがあるからだ。

 

心象風景の有無である。

 

母の時は死んだ母の姿(現実)と尾形自身の証言だけ

勇作の時は頭を打ちぬかれた勇作(現実)と子供の頃撃ち殺した鳥(心象風景)と尾形の証言

 

なぜ心象風景が勇作の死の次コマに必要だったのかを考える

それは後に続く尾形の告白は「尾形の真意」だと印象付けるためではないのだろうか。

「勇作さんの戦死を聞いたとき…父上は俺を想ったのか…

無視し続けた妾の息子が急に愛おしくなったのではないかと…

 

祝福された道が俺にもあったのか…」  

                   ゴールデンカムイ第103話 あんこう鍋 より引用

 

父の腹を裂いた刃物を持ち父に語りかける尾形は印象的な光を背負っている

次ページの幼少期の尾形(心象風景)も朝日を背負っている(まばゆさの表現から夕陽よりも朝日を想起させる)

どちらも非常に宗教性をおびた画に私はみえる。

きっとここでの「告白」は尾形の真意なのだろう。

恨めしかったのではない。尾形は愛を、祝福を求めていただけに過ぎなかったのだろうと思う。

 

しかし花沢中将は最後まですれ違う

尾形のことを「出来損ない」称す

尾形のことを「生まれつき」欠けたように言い、尾形を呪いながら死んでいく

 

確かに尾形は「何か欠けている」

けれどそれは生まれつきではない

きっかけが確かに存在する

 

この漫画のキャラクターたちはどこか「欠けている」ものが多い

戦争、親友の裏切り、弟の死、老いへの恐怖…欠けている者たちはみなそれぞれに「きっかけ」をもっている(姉畑はちょっとよくわからんけど)

尾形のその「きっかけ」は自分を見ない母であり焦がれ続けた父だったのだろう

 

母も弟も父もみな自分の手で殺した尾形にとっての救いとは、「欠けた」ものを埋めるのは一体何なのだろう

尾形の中で「父」が花沢中将という名の人物を離れ大きく肥大化してしまっているような気がする

概念化してしまった「父」に決着をつけるのは一体何なのか、これからがめちゃくちゃ楽しみです。

 

 

 

とりあえず尾形は穏やかに笑いながら死んでほしい…!幸あれ!!

 

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