「私の消滅」 精神科医の復讐方法
とりあえず今読み終えた小説の感想を。
「私の消滅」中村文則著
中村文則は家庭内の事情で一番人間不信になっていた時期に出会ってしまってドはまりした作家です。
ほんとうにこういう小説があったからどうにかここまで来れたような気がします。
今では自分にとっての精神安定剤です。
冒頭の引用を。
「このページをめくれば、あなたはこれまでの人生の全てを失うかもしれない。」
単純に「ずるいなあ(笑)」と思いました。
こんな文句ではじっまたら読まずにはいられないじゃないか。
あらすじは、ある精神科医の復讐の一部始終、としか書けませんが期待通りの面白さでした。
「私が私である証拠はいったいどこに存在するのだろう」
と、私という観念の固定性を壊してくれる内容の小説が大好物なのですが、やはり彼は上手いですね。
題名に記された「私」とは一体だれなのか。徐々に明かされていく。それと並行して物語の外にいるはずの「私」が揺らぎ、消滅していく…。
「教団X」、「あなたが消えた夜に」と、ぶ厚い作品が続きましたが「私の消滅」はページ数はその半分くらい。